切ない30の言葉達

 

 

 

 

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1 ふたり(蒼穹のファフナー 総一)
僕らの航海は失敗だとか成功だとか、そんな問題はもう、如何でもいい。
蹲り霞む意識。心地よい闇の中。

僕の思考は占領されていく。

確かな形を持たないまま。この思考だけが残ってる。



――必ず、お前の元に...

    。




でも声は届かない。

そうし、とベッドの上、重い体を必死に起こして探す一騎の姿など僕にはまだ見えては居ないから。




すれ違いの中で、それでもお互いが確立してく。

ふたりがふたりのなかで確かなふたりになってゆく。

 

2 あの日の憧憬(蒼穹のファフナー 総一)
何よりも輝いていたから。

「空の色って、アレ…偽者って解ってても憧れる。」
「…何時もあそこまで飛んでいるだろう。」
「戦闘の時はわかんないよ。っていうか、意識できない。」
「確かにお前。戦闘時は目の前のこととフェストゥムしか見えてないもんな。」
「……よそ見してていいのかよ。」
「…いや、とてもよくないな。」
流れる雲と渦巻く波と。照り付ける、偽造鏡面の太陽。

「…本当にあるような気がするよ、あの、空。」
「あるから、見えてるんだろう。」
「総士頭固い。」
「悪かったな。」
「…本物の空を、見たよ。でもやっぱり今見てる偽者なんかじゃ届かない。広くて。何処までも広がってた。
 それでも俺達はあの偽者に見慣れてるから、幾ら本物を見ても…わかんなくなる。」
「だが、偽造鏡面無しじゃ、どうなるかも解らない。」
「…いっそ無くしちゃえば?」
「お前が苦しいぞ。」
「別に俺はいいけど…でもそれじゃ、他の皆も戦いっぱなし…なんだよな。」
「理解したか?」
「…あんだけ引っ掻き回したんだから、もうわかったよ…。あの子にも迷惑かけたし。」
「乙姫は楽しんでたぞ。」
「う…。」
吹きつく風が、流れて行く。薄い茶色と漆黒を、連れて行こうとして、出来ない。
流れて、戻っていく。

「あの日見た空…俺、多分忘れないよ。」
「…僕は嫌って程見たがな。父さんの……作戦で。」
「でも…綺麗だったろう?」
「………あぁ、何処までも、広がっていたよ。」


あの日焦がれた蒼穹の憧憬。

僕らは忘れない。
今この瞬間も



あの日見た、空も。

 

3 傷跡(蒼穹のファフナー 総一)
消えぬ傷を、刻んだ。


「痛い?」
「……は?何がだ?」
「俺…が、やったとこ…」
「いや…もう、痛みはない。………第一、何年も前に付けた傷が今でも痛んでいたら、それこそ不味いだろう。死ぬぞ?」
「そうだけど…。でも俺は加害者だから。その傷の痛みを知らない。」 

「いや…。加害者は……きっと、僕だ…。」

真実が招いたのは、残酷な視界。
世界が侵蝕されて消えてゆく夢で幾度も幾度も飛び起きた。
ただひとつ鮮やかに立ちすくむ人影さえ、伸ばした腕が届く事無く砂みたいに風化して、さらさらと流れていった。


ならば自らの中に大切に閉まっておこう
見たくもない未来ならば君を僕の物に

同化して、しまおうと。
そんな、狂気が。

「これは自らの戒めなんだよ、一騎。」
「戒め…?何で総士が。」
「愚かすぎた自分を忘れない為の。」
「何か…わかんないんだけど…」
「解らなくて良い。」


知れば君はきっと

その傷痕を広げてしまうから。
だから此れは僕の胸のうちにまた一つ刻み付けておくことにした。

 

4 届かない背中(SEED/D アスキラアス)
彼は気高い。

彼は儚い。




撃たれたことに醜い感情は零に等しく生まれず、重くのしかかる様に残ったのは単なる後悔と罪悪感。
二度と傷付け合わない
お互いを撃ち落とし殺してしまう事ばかりの気の狂いそうな日常と葛藤と
それが産み出す哀しすぎる尊い犠牲なんてもういらない。
二度と起こしてはいけない。

そう、内に誓ったのに。
『ならば僕は、君を――――』
「ッく……!!!」

暗闇、
ぼんやりと浮かぶ君の面影なんて俺を苦しめる様に儚く傷付いた背中しか見えなかった。

「      」

呟きは、届いただろうか。



撃ったことに哀しい感情は零に等しく生まれず、重くのしかかる様に残ったのは単なる後悔と罪悪感。
二度と傷付け合わない
お互いを撃ち落とし殺してしまう事ばかりの気の狂いそうな日常と葛藤と
それが産み出す哀しすぎる尊い犠牲なんてもういらない。
二度と起こしてはいけない。

そう、内に誓ったのに。
『如何して――――』
「…そんなの……僕にも解らないよ」

吹き荒ぶ白い嵐、
ぼんやりと浮かぶ君の面影なんて僕を苦しめる様に気高く崩れてしまいそうな背中しか見えなかった。

「      」

呟きは、届いただろうか。





届かない背中が再び僕等を苦しめる
運命は残酷な未来しか、くれることはないのだろうか。

 

5 約束(SEED/D シンステ風味)
守るから、君を
死なせない

守るから。



戯言を掻き消したのが破壊音でなく喧騒だったならと、羨望した。


「君は死なないッ…!!!!!!」
届いた声に交差した瞳、
ゆらゆらと不安定に揺らぐ瞳。


まるで無垢な子供。

思い出す、廻る脳内、記憶、断片、炎、憎悪、絶叫、刹那の高揚、裏切った、腕、何が、父さん、赤い、何故、散る肉片、母さん、渇く唇、流れる涙、纏わり付くヒトだった物の脂質、胴、妹、偽りの平和、嘘、シン・アスカと言う生存者、居なくなる、居なくなった、喪った、喪われ
た、奪った、奪われた、


―――――マユ。





俺が守ると、言ったのに。




「うわアぁァァァああっ!!!!!!!!」

満たされない傷痕
果たされない約束
喪失だけ与える道




守るよなんて

一番難しくて一番簡単な約束







俺は何時、
幾度大切なものを喪えば

果たす事が出来るのだろう



先の見えない、果ての無い

約束の荊道 


6 冷たい鎖(SEED/D シンステ)
それは、まるで。



死んだ人間が如何なってしまうとか、それによって誰かが如何なってしまうとか、

関係の無い被害者であり加害者だった自分は知るわけも無い。
知らぬ、世界。




お兄ちゃんと慕った愛すべき妹は戦争が殺して逝った

『シン、』

そして
今度こそは守ると誓った少女は
妹みたいにまた、戦争が殺して逝った




「ステラ…ねぇステラ、起きないと……死なないんだろ…?」
「此処は寒いよ、ほら…雪まで降ってる…」

「ねぇステラ」



「―――――ステラ、」






捕えて僕を離さない
毒華のような
君はさしずめ冷たい鎖。

離さないなら導いて

僕の如何しようも無い感情





誰を、憎めばいい?

 

7 記憶(SEED/D レイシン)
今もまだ疼いてる
生々しく鮮明に
脳裏に刻まれた、残酷な怨念じみた狂気

誰に、と問われれば戦争に
何故、と言われれば戦争だったから



たったひとつだけの家族を喪った少年の
慈しむような、狂気の瞳
目が離せなくなったのは、なにもそれだけではない。
あの紅に、捕えられてしまったから。

「シン」
「………何。」
開くエアの音は小さく啜り泣く声だけが響く共同部屋によく通る。
囁くような声も、赤く目を腫らしたシンに届いたらしい。
「…如何した」
「うっ、煩いなぁ!」
泣きたくなる時だってあるんだよッ!と些かふてくされた様に返す。 

返答が可能な様子を見ると、ある程度までは落ち着いたようだ。
「不安定か?」
「な、んで。」
「この所毎日だろう。」
「そう……だっけ?」
「そうだ」

そこで詰まった所を見る限りどうやら思い当たる節はあるらしい。
シンが情緒不安定になるのも、不思議ではない。
アカデミーでも、遂に模擬の実戦訓練がはじまったのだ。
当たり前だろう。嫌でも、思い出す――――・・。


以前、初めて魘され苛まれる彼を見たとき。
ゆっくりと宥めながらいれば、普段よりも何十倍も小さな崩れてしまいそうな声で
シン・アスカと言う、その瞬間に一度時を止めてしまった少年は

惨劇を懺悔の様に告げた。





契れた胴体、椀曲した足、ぽとりと、堕ちた、パーツ、白い腕
  い    も う   と  。

はらはらと涙を流しゆく姿に衝動が動いた










「……………レイ」
「何だ」
「何で、レイに抱き締められてんの。俺…。」

「気まぐれだ」







単なる気休めであり単なるエゴでしかない



それでもこの傷を舐め合うように

記憶をふたり少しずつ
霧散していけたら。 

 

8 満たされない心(蒼穹のファフナー 総一)
ようやくして、再び手にいれた。
その、ささやかなる温もりをもって。

懺悔しよう、


僕の心は満たされない。





「……………何を、している。」
「あ…総士……?」
雨の夕闇。
バケツを引っくり返したように降る雨の中、見知った影が傘もささずに蹲っていた。
「指令と…喧嘩でもしたか?」
「違うよ。」
「なら、如何して…」

つむぐ言葉等、その瞬間に消え堕ちた。
交差する瞳は捕えてしまいそうで、

例えば、そうだ。
この 醜い執着とか。

「雨がみんなみんな洗い流してくれないかなって、思ったんだ…」






何よりも愛しくて何よりも憎らしくて

存在を至らしめた君を
この手にいれても



満たされない

大きすぎる  器


「大丈夫だ」









「みんなみんな――――僕が消してあげる。」


冷えた体を捕えても
君の心は捕まらない


けれど願うのは僕に退路を示し続ける君を同化してしまいたい程欲しいという羨望。


満たされない心はきっと何時か再び僕に同化を差し出すのだろうと、

悟った

 

9 砂時計(蒼穹のファフナー 総一)

忘れてしまいそうで怖い
君という存在の痕跡。


それでも彼が帰るまで未来永劫止まらぬ、容赦など無い






「写真、撮ろう!」
最初にそう言い出したのは遠見だった
シャッターの軽快な音が広がる小さな世界を切り取って、紡いで。

最初は、"みんな"で写る、集合写真。
笑う遠見と翔子と甲洋とか少し偉そうに立つ咲良と剣司と衛とか不意打ちが多い総士とか。
けれど、唐突に影が落ちて人影は減る。

『私、約束…守れたかなぁ……一騎、くん』
『お前なら、助けられた筈だ…っ!!』

空へと翔んだ少女
回廊に捕われた少年


捻れた、もの



再び始まる刻はまた、新たなものを抱え込んでこの島の小さな世界が紡ぐその、存在の証

例えば海での
例えば祭りでの
例えば

例えばささやかな平和。

『……総士っ!』
『何だ?』
カシャッ
『…ナイス一騎君!』
『うん、お疲れ遠見』
『な……撮ったのか?撮ったのか!?』




「凄い、驚いた顔してる…」
「納得も何もなく撮ったのかとかばっかりだもんね」
「はは、遠見の不意打ちが巧いんだよ、きっと。」
「それあんまり、褒めてないよね…」


「此処にはいるのにな……総士。」



紅い眸に映るさらさらと流れていったとてもとても大切なひとを

酷く悲しむ少年が、白い部屋で眺めていた








みんな砂時計のように、時に捕われたまま生きてるならば


忘却の砂をいっそ融かしてしまいたい



忘れたくない
だから待ってるよ
だから帰ってきて欲しい

そんなことを、願った。 

 

10 知らない(SEED/D パラレルT)
有り様はとても悲惨で。
言葉なんかじゃなにも表現出来ないのではないかと言う位哀しい


灰の暗い―――提示された現実
逃げるなんて卑劣な行為すら許される訳もなく、
彼の肉体は動いていた。

「っ…、     」
聞こえている?
君を呼ぶ、声。




『うああぁ――――――!!!!』
痛ましい叫び。脳内でうずく、惨劇。
何故生きていられるのかも不思議だと言われていたが、それは自分の為だと理解していた。




『お前なんかより先に死んでやらないからな!』
『…好きにしろ』
『もしもレイが百歳で死んだら、俺なんか百二歳まで生きてやるからな!?』
『……何故だ…?』
『…いっつも、死んだような目したレイに、生きてて羨ましいだろって、自慢してやるんだよっ』



「くっ……!」
たぐり寄せた記憶に、胃が暴れだす。『集中治療室』と書かれた壁に体重を預けて、ずるずると座り込む。
――知らない
暗い廊下に漂う薬品の臭いが、濃く立ち込める。
――こんな姿の、シン。ガラス越しに見た機械人形を開いたような、
――知らない、知りたくもない。
もはや人でも無くなりかけたシンの姿。
――先に待つ絶望より深い、嘆きも 苦しみも
慟哭も。


「知らない…っ……!!」

やかましいブレーキ音も飲酒運転の加害者も
ここで何もできない自分にすら腹腸が煮くり返る。


許せないのが果たして何なのか解らないまま

ただあの忌まわしい機械音だけが響いていた 

 

11 慟哭(SEED/D パラレルU)
何時か自分の翠と彼の蒼を綺麗だと言った朱い瞳が堅く堅く、世界を遮断した。

「おいレイ、何を…っ!?」
「簡単でしょう…?」

――――此処を、切断すればいいんですよ。


そして、擦り切れた心は絶望のみを差し出した。





『アスランさん、』
呼んだのは、記憶の亡霊。過去にすがり着かなければもう壊れてしまいそうで。
『…ちょっと、アスランさん?』
『ん?…あ、シン?』
『何ボケた老人みたいな顏してんですか、アンタは!』
『ボケ!?』




「や…めろッ!!」
朦朧としたレイの生命を絶とうとすべく動く腕を掴めば、瞳は此方を鈍く刺す。


「…貴方も同じだ……







皆優しすぎる…!」


張り上げた声が白い四角い箱で横たわる愛しき少年に届くなんて、ありえない。

 

12 「さよなら」(SEED/D パラレルV)
話をしよう。
虚無を抱いたままの寂しい俺にはそれしか出来ないのだから。


覚えているのはパズルピースみたいな欠片の真実。
「レイ」と「アスラン」を見た確かなこと。
ああそうだ。
それから俺を撥ねてぐちゃぐちゃにしたあの巨大な陰。
それから。それから…。



そして鮮やかな光を、景色を、色彩を喪った痕のみ遺す瞳を意識と共にぬかるんだ空間から引き起こした。

「おいレイ、何を…っ!?」
「簡単でしょう…?此処を、切断すればいいんですよ。」

「レイ」と、「アスラン」の声を聞いた。
「       」
絞り出すように喉を震わせても出てこない音に嫌気すらさしていっそ暴れてしまいたいと考えても、何故だか動かない体を如何して動かすことが出来ようか。

あぁ、夢みたい。
そんなことを意識で呟いて、彼等の会話から断片的にその現状を知る。

俺は交通事故にあったこと。二度と動けず話せずそして意識すら戻らないであろうと、医師に告げられたこと。
(馬鹿だなあ。俺、起きてるのに…。)
「ならばこれはシンの為だ!わかってください、アスラン…っ!!」
「違う、それは逃げているだけだろう!?」
「ならば貴方はこの生き地獄をシン共々受け入れようとでも、神じみたことをいうのか!!」

(あぁ、…馬鹿だなあ。)そこにあるであろうふたりの腕を抱くことも出来ぬ体を忌々しく思い、そしてくだされた決断を聞いて。



俺は死を優しく受け止めるよ。


それが貴方たちに出来る全てならば
出来た人間ではない俺は逃げずにそれを受け入れよう。



そして俺は貴方たちにさよならも言えないまま。
意識はどこかに連れていかれた。






これでおしまい。
みんなおしまい。 

 

13 繋いだ手(蒼穹のファフナー 総一)
離さないでね、と

言われた。


慕う君を束縛した。
隔絶された世界と信じていたから、もうどうしようもなく。
確実に言えるのは僕がおかしかったということ。


「…離せよ」
「離さない。離してやらない。」
「なんで…っ!!」
「なんで?随分と愚問だな、一騎。決まってるだろう?」


――――君は僕のものだから

「そのまま何処か誰も知らない場所に閉じ込めて僕だけを見るようにしてその血一滴すら惜しい程愛してる。

殺してしまいたい程に君を愛してる。」






幼い頃、二人で探検をした。
未だ知らぬ場所を探し当てようと、幼稚な冒険をした。

「離さないでね」

はぐれて離れ離れを恐れた君は強く強く掌を絡ませて、そんなことを

言った。













そして少しだけ大人になった君は振りほどく。

僕の、手。 

 

14 その手を振り払う勇気(蒼穹のファフナー 総一//13の続き一騎視点)
怖いと思ったのはそれが初めてで。
だから其の手を、振るえる手で、振り払ったんだ。
「…一騎?」
「総士、は。」


「総士は世界と俺と、どっちを、取るんだ」




当然のように告げられた僅かな言葉に張り詰めていた涙がぼろりと零れ、どうしようもなくてたたらを踏みたくて。
どこで、捻じ曲げられたんだろう。

駆け出した足は止まらない。
溢れた涙も止まらない。
どうしようもなく、どうしようもなく哀しくて。
振り払った手はまだがたがたと震えたまま、彼の言葉を反芻した。



『お前だよ、』


15 愛しい人()

16 子守唄()

17 いない()

18 手首()

19 縋りつく()

20 キス()

21 空()

22 褥()

23 優しい嘘

24 裸足

25 美しいもの

26 闇

27 霞む瞳

28 雨の夜

29 カウントダウン

30 永遠

 

 

Thanks!!////七ツ森