僅かにぎこちない紅茶の味がふと思い出されるときがある。
なんだかよく解らない雰囲気の中でかちゃりと静かに用意されたそれは自分でも解るぐらいに、美味しかったのだ。
「沢田!」
「は、はいぃ!?」
「授業すら聞けないのかお前は!大体、」
思わず溜め息をついてしまいそうになる。それもそうだろう。何せ、この教師の説教はだらだらねちねち長いのだ。
お陰で威嚇するように睨みつける獄寺君に必死にアイコンタクトを送る羽目になった。
そう、また溜め息をつこうとした瞬間。
「2-A沢田綱吉。応接室に今すぐ来ないと咬み殺す。」

教室から、音が消えた。







モノトーンに支配された応接室に来るのは幾度目だろうか。
人の気配は少ないくせに威圧感が半端なく扉の外、それだけではなく応接室に繋がる廊下にまで響いてくるのだ。
どうしようもなく駄目駄目な自分には縁のない場所な筈なのに、何故だか何度も此処に来ている。
始まりは覚えている。
あの、やけに美味しいくせに、漂う雰囲気だけがぎこちない、あの、紅茶の日。
「失礼、します…」
「早かったね。そこ、座れば。」
「先生に激しく追い出されたもので」
「ふうん。」
そっけない返事をするその人に対する恐怖はあるものの、それも大分薄れてきたと思う。あの日返した学ランをはおって数枚のプリントに署名をしたり捺印を施す姿は些か違和感がある。
それは解りきったことで、この人がまさしく王として君臨すべき場所は横たわる人間の上、なのだから。
「貸しを、」
「はっ…はい!?」
くだらない思考のまだらな繋ぎを断する声に、座るようにとの指示通り腰掛けた黒い革張りのソファーに残る(恐らくここで起こる物騒ないさかいの産物であろう)僅かな傷を見ていた顔をがばりとあげる。
「貸しを、返してもらおうと思ってね。」
この人の満面の笑みはどうして邪気を孕んでいるのだろう。
肯定しか口に出来ないほどの威圧感に勝てない自分は小さくはいとしかいえなかったのだ。



そりゃあ、こんな人に借りを作った駄目駄目な自分も悪いだろう。ああ悪い。
でもだからって如何して。
「……なんだこれ…」
背中にかかる重みはああ確かに。
「何、じゃないよ。言ったでしょ。」
とりあえずどこからつっこんでいいのか、教えてくださいリボーン先生!

 



今日から君は、僕の枕に、なったから。
















「……硬い」
「すいません…(なんだこれもう訳がわかんないけどとりあえず世界中にすいません…)」
「なに君、どうしたらこんなに後頭部に骨が直撃するの。ちゃんと食べてるの」
「え、あ、はい食べてます…けど、(こわい)」
「ふうん……肉がないよね。(がばり)」
「(起きた!?)いやそんなこと、も…………、…あの、雲雀さん…」
「ほら、ないじゃない。肉。脂肪率とか測ったことある?」
「いや、いやあのその前に何ゆえ腰に手があるんですか(獄寺君…は厄介だから山本助けてー!訳わかんないよこのひと訳わかんないよ!!)」
「………知らない。」
「はいぃ!?」
「何、悪いの?」
「…いいえなにも悪くなど…ない、です…」
「そう。なら、いいよ。(ごろん)」
「………、…(大人しく、なった)」
「……寝たら、咬み殺すから」
「は、はい…!!!!」
「…………」
「…………」
「…(おかしい、な。)」
「(なんだろ、これ)…」

「「(また、うるさい。しんぞうが。)」」

 

 





(短い(笑)とりあえず前回のヒバツナ、それは堕ちる〜、の続編…みたいなもの。貸しとか単に口実で、何故だか解らないけど一緒に居たいような気がしなくもないので枕に任命しちゃう雲雀様、頑張って強く拒絶するだとかする勇気はないし何故だかこのままでもいいかなと思えちゃったツナ。前回自覚したかと思いきやこいつらまだでしたすいません。オチがまたふたりでトキメキッシュですいません_| ̄|○あまりにもアレなので数分後話を以下にでも…↓↓)(070417//Hisaki.S)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどまで定期的に上下していた体が、だんだんゆるやかなペースで動いて。
「…ちょっと、寝たら咬み殺すって言っただろう。」
がばりと遠慮無しに起き上がれば、そのまま身体は此方に倒れこんで、するりと避けてみれば派手な音を立てて後頭部から倒れてくる。
一瞬呻いたかと思いきや、随分と鈍いらしいそれはすやすやと安堵したような顔で惰眠を貪っているらしい。
「授業をサボって、いい度胸だ、ね。」
上から見下すように眺めていれば、ふと脳裏を夜の闇がよぎる。
ぼろぼろになった身体、朦朧とした意識の中で自分を温かいのだと虚ろに呟く姿。
あぁそういえばきっとこの子は覚えていないのだろう。

寂しいような気持ちの反面、愉快で仕方ないと躍るような心に身を任せて。
僕は、彼に



二度目、の―――。