変わることをよしとして認めざるを得なかった。


それを動かしたのは鮮やかに煌めく自分のソレよりも美しい色。


今はもう、見えないけれど。

 


流星のように流れ着いた光を受け止める腕

 

 

※注意※
このお話は見事なまでにED捏造、ネタバレ三昧でたまーに暗い感じのハッピーエンドを目指した感じです。苦手な方とネタバレ勘弁だぜ!な方は読むのをやめておいたほうがいいかと思われます。
緋咲の勝手な捏造なので、まぁいいか許してやるよ!な方のみどうぞ。(言い訳というか補完だらけの後書きは一番したです。)

 

 

そして空は青く。//けれど嘆息を貴方は捨てた。//それでも迎えにゆくと言えば笑顔で。//さよならは言わない。//出会いと別れは紙一重なんかじゃない。//赤色が再び地へと降り立つその瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


眠りから醒めるのは何時でも変わらない。朝日が昇る頃に自然と瞳が開く。
それはあの世界の為の犠牲を見守るしかできなかった日々も、以前も以後も変わらぬ習慣と化したようなもの。
何時寝て、何時起きてるんだ!なんて叫ばれたことはまだ記憶として残っている。
想い出にすることのなんと怖いことか。
恐れられた死霊使いが死霊に恋焦がれるなどなんという笑い話か。
「こんなことでは笑われますねぇ…。」
独り言がうっかりと増えたのもきっと、あの光のせいだった。
今はもう、返る言葉もないけれど。
気付かぬうちに握り締めていた拳をそっと緩めて、重みのある軍服をかっちりと着込む。
やることが無い訳ではなく、むしろ積まれる様に溜まっているのを知りながら、夢見の悪いが為にぼやけた思考を戻すために暫く座り込む。
幸せが逃げるなどと、王族2人と幼馴染の皇帝はよく言っていたがどうにもこうにも止められないものだ。
気がつくと、溜め息をついていた。



「大佐ーっ!!」
「おやおやー?アニスじゃないですかー。変わってませんねぇ。」
「む、何かとーっても失礼な意味合いに感じるんですけどぉー?」
「ははは、気のせいじゃないですかー?」
ぶんぶんと実に子供らしく手と結われた髪を振りながら少女が駆けてくる。
相変わらず、金目の物にちらちらと気を取られがちだが、以前よりも落ち着きというものを学んだらしい。
「でっ、ガイはどこですかぁ?」
「ふむ、私は見てませんねぇ。案外、恋しくて一人先に行ってるかもしれませんね。昨日はブウサギの方にぶつぶつと語りかけていたそうです。陛下曰く気持悪い感じで。」
「うっわ引くー…」
想像がついたらしい。
ひきつった顔で丁度いいようなタイミングを狙ったようにすまない遅れた!などと言いながら全速力で走ってくるガルディオス伯爵を、アニスが見やる。
「……っと、何だアニス。久しぶりにしては目線がかなり痛いんだが…」
「うぅーん、何でもないよぉ!ちょーっとガイの変態っぷりが増したっていうかますます痛くなってきた、なんて思ってないもーん!」
「ジェイド!あんた何吹き込んだ!!」
「おやおやなんですかやつあたりですか?別に私は貴方が一週間もまえからそわそわだかしょんぼりだかそんな擬音が聞こえそうな感じでブウサギに頬擦りしていたなんてひとっことも言ってません。」
「げっ!なおさらやっばーい!ガイ、寄らないで!」
「とか言いつつなぜにじり寄るんだアニス!っていうかジェイド、アンタ何言ってんだ!!」
最終的には、ぎゃー等といいながらアニスに引きずられていくガイの後ろ、2メートル程の空間を保ちながらアルビオールまで歩く。

音譜帯が霞みそうなほどの青空の下、今日は2年目。
消えた姿を誰一人目にしないまま2年姿を見せない聖なる焔の為に、仲間たちが集まる日。

 

 

そして空は青く。

(あなたはどこらへんにいるでしょう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**

 

叫ぶことを忘れないで。
喚くことを捨てないで。
嘆くことを知っていて。
涙を流すことは罪などではない。


恐れたのは恐らく許されること。それを、確固たる事実だったその悪夢のような悲劇を生んだという真実を記憶から思い出のようなものにしてしまうこと。
だからこそひとり、膝を抱え込むように眠り、そして泣いたのだろう。
理解は出来なかった。つい最近それがどうしてなのかということを、何となくだか理解したのだ。
それもこれもあのお節介な妹のせいで。

 


ちらちらと雪は降る。やむことを知らぬ、積み上げられることしかできない白無垢の結晶体は花びらのようにはらはらと空から散って、地に溶け根を張り塊となって氷となす。
ざくざくと、その積み上げられたものたちを踏む音、それから殺気などないがどこか似通った気配がだんだんと近づく。
あの頃、鼻垂れが名前をわんわんと喚きながら走る声だったり、それを軽快に笑い飛ばす殿下殿、それにそれらをよく微笑みながら見て、いた。
「兄さんはきっとわからないでしょうね。」
「おやおやオズボーン殿。どうか致しましたか?こんな夜更けにお一人とは。」
見慣れたモノクロの服、その上に少々厚手のカーディガンを羽織った姿。いくら雪国になれたものだからといってそれじゃぁ寒いのではないかとも思うが、案外そうでもないようらしい。
平然と隣まで来て、広場に幾つか置かれた椅子のなか、わざわざ自分の隣に腰を降ろした。
「兄さん、あのね、これでも私ネビリム先生のところで色々と教えてもらったわ。そこら辺の人妻とは違います。」
「これはこれは。そんな怖ぁーい妻は旦那様に捨てられてしまいますよー?」
「……、ねぇ兄さん。兄さんはどうしてあそこまであの子が必死に取り繕いながらあたふた隠すのか、わかっていないでしょう?」
「わかりませんねぇ。理解しようとも思いませんし。」
「そんなことじゃ、そのうち陛下に笑われますよ。」
「それは比較的日常的なことですね。」
あえてわざとらしく溜め息をついてみれば、くすくすと笑う。この明らかにまだまだ年齢詐称ができそうな表情やらを見ると妹なのだと自覚してしまう。
「兄さんと…先生の話をしてからね。兄さんたちは気まぐれに此処に来る様になったでしょう?それで今日みたいに私が歩いていたらあの子。昔のサフィールみたいに此処で遊んでたのよ。」
「よりにもよってディストですか…」
あぁでも確かにあの卑屈というか変な方向にまっすぐ一直線、信じて疑わないようなところは似ているのかもしれないなどと戯言
極まりないようなことを考えている間に、横からはまだ、話が続く。

「何をしているのかって聞いたら、吃驚したようにこっちを見て、それでまた俯いて。雪を見てたら何か変わるかもしれないから、って言ったのよ。ねえ兄さん、あの子、あまり寝てないんじゃないの?目の下、凄かったわよ。」
「ふむ、それじゃぁ何処かで知恵をつけたんでしょうねえ。何時もはそこまで酷くありませんから。」
「あら、そうなの?」
「えぇ。」
そこで、ようやく良く喋る口を閉じて、考え込むような表情になる。
丁度いいので、主に頭上や肩に積もってきた雪を振り払いながら考える。どうしてそこまでして涙を流すのか。どうしてその、眠れないような証拠を隠したがるのか。
「…きっと悔いているのよ。」
「………ネフリー、何時の間に私の心を読むようになったんですか。」
「きっとそれは兄妹だからね。兄さんにはきっとわからないでしょうけど、あの子は沢山の人間を殺してしまったこと。それを、きっと悔いていて。忘れたくない。忘れちゃだめだ、と、思っているんじゃ…ないのかしら。」


布擦れの音がしん、とした部屋の中によく響いて、淡く眠りについていた意識が戻される。
「………ルーク。女々しいですよ。」
「…ご、めん。起こした…。」
びくりと肩を揺らしたが、それでも此方には背を向けたような、壁際に向かって小さく縮こまる体勢をやめることは無く、そのまま布団を被りこむ。ごそごそと小さな山を作って、そして動かなくなった。

「……ルーク。泣くことは罪ではないですよ。」
「いいんだよ。」
会話は、かみ合わない。
「叫んで嘆いて喚くことも罪なんかではないそうですから。」
「いいんだよもうなんでもいいんだ」
ガチガチと歯車がずれて、ゆく。

「俺は忘れちゃいけないんだよ此の手で何も知らないからって師匠に言われたとおり師匠だけ信じて師匠だけ見てジェイドやガイやティアやアニスやナタリアやイオンやそれから沢山の人たちの言葉も聞かないで聞いたふりをして見てそれでも見なかったことにして何も知らないようにし続けて師匠だけに縋ってそうしてあの人たちをアクゼリュスの人たちを殺したことを忘れちゃいけない無かったことにもしちゃいけない駄目なんだよ記憶じゃないと駄目なんだよ過去になんかしちゃいけないしそんなこと俺には出来ないんだよ」



途中で無理矢理布団を剥いだ。

短くなった赤い髪をさらさらと零して枕を濡らして、ちいさなこどもは震えながら膝をその身を抱えたようにつよくつよく瞼を閉じていた。

 

 

 

けれど嘆息を貴方は捨てた。


(溜め息も珍しいくらいの心配するような呼び声も、今の彼には届かない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 


迎えにいきます。
こっちじゃなくていいよ。
いいえ、逝きます。
違う、違うんだよ。お前はそっちで、俺がまだ救えるかはわからないけど、世界を。見てて。
(いきていて)

 


エルドラントが降る日。
着々と世界が崩れてゆくのを望むものが笑みを深く深くしてゆく一方で、それを止めようと暗躍する者達は夜の闇、砂の町でそれぞれの時を過ごす。
酒場で暫く一人で酒を飲んでから、夜も深くなった頃合を見て宿へと戻る。
2度ほどアルビオールの音を聞いたので、恐らくもう全員が宿でぐっすりと眠っているだろう。何だかんだ言ってあのパーティーは実年齢もそうだが精神年齢が低い者が多いので、緊張するなどと言いつつもきっと明日に備えて緊張疲れで眠っていたりするのだろう。
僅かばかり、酒場から宿までの道のりが長いと思いつつも足を薦めてみれば、闇にとけることを今の今まで一度たりともしなかった聖なる焔を示すような美しい明るい赤色が、ぼんやりと瞳に映る。
「……………何してるんですか貴方は。」
「あ、ジェイド。おっせー!お前、おっせー!!」
「あのですね、貴方が待っているなんて私は一切知りませんので、配慮なんてせずに飲んでいたんですが。どうして私が全面的に悪いように言われるんです。」
「あぁもういい!と、とりあえずだな!お前にヒトコト言ってやる!!」
「おやおや何でそんな喧嘩ごしなんですか。眠いんですかお子様は。」
「だっああ!黙れ!」
テンションが上がると素がでる、というよりも元の"親善大使殿"に戻るのだろうかと思ってしまうぐらいの気性の荒さに何故だか懐かしさすら感じてしまう。それはきっと明日、今日と同じ時間はもう来ないで、彼の姿はもう見れないのだと、理解できるようになった、なってしまった心が疼くからなのだろう。

「とにかく、だ!」
「はい、なんですか?」
「お前に、礼…を。言おうと、思って。」
「……おやおや、罵られるかと思いましたよ。」
そんなことはない、と強く返される。
フォミクリーという技術を生み出したことからきっと世界は狂った。幼い頃の己をこの手で絞め殺すことが出来たならなどと夢物語を切実に願ったことすらあった。それは目の前の子供一人すら助けられない自らを呪い殺したくなった瞬間とまったく同じに。
「その、ありがとう…な。」
「……何故そこで嬉しげに言うのかがよくわからないんですがね。」
「嬉しい…嬉しいよ。だってジェイド、お前がこの、フォミクリーを考えてくれなきゃ俺は居なかった。そりゃ、世界がどうのこうのって酷いことにもなったけど。けどジェイド、本当に感謝してるんだ。お前が俺を作ってくれなきゃ俺は此処でお前と喋ってもないし、お前と出会うことすらできなかった、し。皆とこうして沢山沢山話をすることもできなかった。だから、心の底から、ありがとう。」

それはまるで。
死を悟ったような、笑顔で。
そんな事を。

だからこそ、迎えにいくのだと口にしてしまう。
こなくてもいいのだと、子供はいう。

 


「いいえルーク。」
「な、んだよ!まだ何かあんのか!?」
「それでも行きますよ。無理矢理にでも摂理に逆らってでも。」

 

 

それでも迎えにゆくと言えば笑顔で。

(心をくれた。変える事を良しとしてくれた、貴方のところへ、這ってでも。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

確かに帰るといった。
それがどんなに無茶苦茶で叶わぬものだろうと自分は知っていたのに。
それでも心の底からそう望む。
希望に縋るのもたまにはいいと、無理矢理、言い聞かせて。

 

 

「………、はいはーい、みなさーん。今度こそ帰ってきちゃったルーク引っ張ってとりあえず此処から離れないと、夜は本当に危ないですよー?」

ぱんぱん、と手を軽快に叩く。さながら子供を引率するように。かつての師もこんな気分だったのだろうかなどと考えながら言えば、少しだけ遠くでひとつに群がっていた影がぱらぱらと、それでも消えないだろうかと心配するように近くを歩く。
「ほらほら、待ってるノエルが心配しますよー、アニス」
「大佐ちょっと馬鹿にしないでくださーい!ぶーぶー!!」
「そうですわ大佐!アニスは純粋に喜んでいたのです!それに、ノエルだってきっとアニスのように嬉しくおもってくださいます。だから女性が涙を流すのを止めないでくださいまし!」
「おやおや、ガイ、駄目じゃないですかー。」
「俺かよ!っつーか…あーもー、ルーク…本当によかった…!!!」
「…ガイ、貴方目が本気だから、今ルークに近寄らないで頂戴。」
「あ、はは!変わらないな!!」
軋む音がする。
貴方はそんな不自然な笑顔をしないだろう。
一瞬の刺すような視線に気付いたであろう、彼が此方をちらりと見て、また直ぐその目を、逸らす。
錯綜した思考、その刹那の視線。刺さりそうに為る程の鋭利さにあぁやはりそうなのだろうかと絶望にひたってみたい気分がこういうものなのだろうかと、わかった。

 

ひとまずはケセドニアに向かい、話をしたがる面々をいさめながらそれぞれ眠りにつく。
個室を取れて本当によかったと思ったのはそのノック音が聞こえたときだろう。
「…おい、どうせ起きてるんだろう。早く開けろ。」
「嫌ですよー、貴方が開けてください。年寄りは無駄な労働を好みません。」
そう言い返せば心底面倒くさそうに舌打ちをしてがちゃりと扉が開く。
「貴方がルークの笑みをしようとしてもなんだか不自然でしたよアッシュ。」
「うるせえ黙れ。てめえはさっさとアイツを迎えにでも行きやがれと渇を入れに来てやったんだ。」
「いやー、アッシュに渇を入れられるなんて思っても見ませんでした、ねえ……。」
なんという、ことか。
死霊使いともうたわれた自分が、止まりそうになる。心臓が変な動きをしても可笑しくないのではないかというほどの動揺が身体を巡る。電流のように、びりびりと揺らしながら。
「それはそれは、実に、詳しい話を聞きたいですね。」
もう一度鼻を鳴らしてから、それは、始まる。彼と同じ声色だけれども違う、語り部が。

 


内容の濃い話を、短時間に一気にするものだから少々混乱してしまいそうになる。
よくよく見ればアッシュの髪色が以前よりも多少ルークの明るい色に近くなったような気もする。これできっと、感極まった状態の仲間たちは気付かなかったのだろうか、彼の、不自然な笑みに。
こうして話していると一応は意識していたであろう眉間の皺が戻ってくる辺り、相当無理をしていたのだろう。ルークの状態を保つこと。

「…音素が、上手くコントロールできていない、と?」
「あぁ。ローレライの野郎は、そう言っている。アイツはまだ、バラバラだ。」
「まったく…音素の扱いは天下一品でしたからね。なにせティアと幾度も訓練しなければならない程。」
「それも、ある。」
「も、とは?」

 

「アイツ自身が、こちらに戻ることを嫌がっているということだ。」

 

 

さよならは言わない。

(言わない、言ってやらない。何故なら私が迎えにゆくのだから。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

まだ悔いているんですか、あなたは。

いっそ女々しくて見ている方がイライラします

だから、さあ、世界が貴方を許さなくともわたしは貴方を許します

ほらさっさと聞き分けなさい。

 

 






こちらに、もどってきなさい、ルーク。

 

 

出会いと別れは紙一重なんかじゃない。

(    、  。          、     、       。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

教えやしない。知りすぎている自分が知らない知らないと喚く子供に教えてあげる訳がない。決して大人になって幼稚なことをしているわけではない。ただ単に、そうだ。自分は彼を傷付けたくないとそんなことを思っているからなのだろう。
上手く開けない心は今まで動かそうとなんかしなかったから。その心を穿った金色の親友、穿ったところから痛みも何もかも無視するように無理矢理その笑みで全てをこじ開けようとした子供。
帰ってこないのならば、貴方が開いて変えた心も意味を持たない。
だから、だから。

ざくり、と音を立てて歩んでゆく。
当時は魔物とオラクル兵が入り混じっていたが、現在ではささやかに魔物が生きているのみらしい。此処に居る魔物はきっとヴァンが連れてきたものだったのだろう。もしくは、作られた、もの。
人為的に手が加えられていたものといわれれば納得が出来るほどに異常な形をしていたものばかりだったと思い、2年もたった今あぁそうだったのか笑みを浮かべてしまう。
白い建物、すべては中途半端に崩れていたり、完璧に崩れて柱だけがぽつりと建っていたり。足元の危うい場所を歩いて魔物を容赦なく殺しながら、そしてようやく彼が消えた建物の前まで辿り着く。
此処はティアの師であるリグレットと戦った場所、此処は彼が罠にやすやすと引っかかった場所、此処はガイが自分の部屋だと驚いていた場所、此処はアッシュというオリジナルの末路を悟った場所、此処はイオンという存在と世界に憎しみをぶつけたシンクが散った場所。
歩いているだけで記憶が蘇ったように脳裏を巡り巡るものだから、一人でも退屈などなく、足は進む。
彼が悪戦苦闘しながらああじゃないかこうじゃないかと解いていた仕掛けを容易く解いていきながら、まだ記憶は巡る。
だんだんと、消えてゆくその腕を見て見ぬ振りをしながら、何もいえなかった自分がそこにまるで居るかのように。

 

ローレライを解放したと思われる場所は、ごっそりと何かにもぎ取られたように穴が開いていた。
「ルーク。聞こえているはずでしょう。」
はたから見ればその穴から真直ぐ、空に向かって話しかける奇人変人のように見えてしまうことは重々承知の上で、話しかける。
「貴方が帰りたく無いと言っても私は貴方を迎えにゆくと言ったでしょう、そして貴方は頷いた。
 ゆっくりでもいいんです。そんなにせかしてすべての罪を消化しようだなんてしないでください。過去の罪だらけの私でもいいのなら一緒に貴方の罪ぐらい背負ってあげます。如何していいかなんてそれぐらい、一緒に探してあげます。

 さぁローレライ!その子が少しでも揺らいだのなら、返してもらいましょうか!」

 

第七音素が、うずまいてゆく。幾ら理論を構築したと言ってもすべてが上手くゆくわけはないと、幼少身を持って体感した。
それでも、これは成功して欲しいと、願う。
破壊と再構築を約束されたこの超振動。
きっと構築するのは、アッシュ曰く音譜帯に自らの意思に加えローレライに好かれてしまったらしいルークなのだろう。
眩しすぎる光に呑まれながら漠然とそう確信を抱いていた。




 

 

 

 






「……………お前、馬鹿じゃねぇの。」
「おやおやまったく馬鹿だなんて失礼ですね。人がわざわざ危険を顧みずに疑似とは関わらず超振動まで起こして差し上げたんです。感謝なさいルーク。」
「だーかーらー!それが馬鹿だっつってんだろ!お前!ジェイド!!死んだらどうすんだよ!!」
「死にませんよ。」
「どういう根拠だ!」
「だってルーク、私は貴方を迎えにいくまで、死ねませんから。」

 


おかえりなさい。


微笑めば、躊躇していたルークはようやくこの腕へと飛び込んだ。

 

 

赤色が再び地へと降り立つその瞬間。

(わたしは腕を伸ばして受け止めようと何時でも何処からでもきっと駆けつける。)

 

 

 

(お疲れ様でした。(笑)短編的にぽつぽつと繋がってますが…長々とお疲れ様でした…。ジェイドの場合はこんな感じです。実は陛下ルートも考えてあったんですがとりあえずネクロマンサー!!…が、先にアップロードされちゃってます。BGMは散々騒いでましたがミスチルの「箒星」で御願いします。激しくジェイルクソングに聞こえる。ぶっちゃけこれの土台設定は箒星聞いて思い浮かんだので…。あれ聞かなければ緋咲さんは此れを書いていない。BGMにしながら読んでいただけると嬉しいです。っつーわけで、捏造EDパターンのひとつなジェイルク終りです。気が向いたら別のパターンが出るかもしれませんが、これはこれで。それでは、ハッピーエンド!!)(060802)

 

 

むりやりこじつけな補足としまして。

 

擬似超振動はジェイドがとりえの知恵を捻り絞って装置かなんかつくってちょーしんどーしちゃったということです。で、その擬似超振動の力を少し借りてあとはローレライが仕方ない的な感じでルークは戻ってきます。

其の後のお話もかきたい、なんて。(笑)とりあえずハッピーエンドのつもりです。_| ̄|○

 

Thanks!!//七ツ森