絶縁された世界で君は何を思い何に涙するのだろう。
希望を堕とす世界で己は何を見出し何を捨て逝くのだろう。

現実と幻想と、夢と現の狭間に立つのは誰の影か。


思考などせずさぁ逝け殺せと、何処からとも無く叫ぶような声は轟いた。
それすら、単なる日常にしかすぎないけれど。

 





雑音叙情詩
                     リリックノイズ


 

 




*あぁ世界はこんなにも美しいのに、何時でも2人は血塗れの後ろめたい道。

「江夜くん。この前の授業のノート、取っておいたよ。」
「あぁ、ありがとう。助かるなぁ本当。」
「どういたしまして。双子がお休みだとクラスもなんだか寂しいのよ。こう、覇気がない、みたいなの。」
「覇気は常に戮と共にあるからね。ありがとう、本当。」
がたんと席を立つに相応しい言葉の応酬を締め括りながらにこりと微笑む。
それだけですむなど、あぁなんてこの平和ボケした世界は楽チンだろう。そう言うことは罪だとしても、思うことは勝手だろう。腹の中で優等生らしい模範を演じる生徒がそんなことをひたむきに思うなど、誰がいようか。
いるとしてもあぁそれは片割れだけかな、と、足軽に屋上に向かう江夜が思った。

学び屋はとても清らかで、なんとまぁ、似合わないものか。

 




*何時でも、空は遠く遥か高くから見つめているだけだ。

鉄筋校舎、レベルはなかなかに高い学校らしく、設備もそして学校そのものも美しい。
それは体育館であり教室であり、屋上もそれに等しく。
陵戮は唸り声だか溜め息だか、自分でもわけのわからないようなものを口から発する。
「………熱ィ。」
「戮ー?今日は此処であってるー?」
呟けば正しくなタイミングでばたんと屋上の扉が開く。
それは当然、扉からすぐ近くで寝転んでいた戮がどうこういう暇も隙すらもなく。
「…あぁ、ごめんごめん。今日ちょっと体調悪いんだっけ?」
「………………!!!」
ごいん、だとか、がちんだとか、あぁ頭蓋骨が割れたんじゃないか、など思えるような音を立てる。
痛い、このやろう、痛い、あぁもう、クソ、と悪態をつきたいのも山々だが生憎とそこまで気が回らない。

頭痛の病まぬ脳味噌に更なる痛みが加わり、ふるふると震える戮を蒼穹はきゃらきゃらと笑っているようだった。

 





*大人たちは醜く汚くそれでも大人である自分は道具に値する子供を使うしかない。

「はいはい、わかりました。それじゃぁ僕が直々に迎えに行くとちゃんと伝えて置いてくださいね。逃げたらどうなるか解ってますか、とも。」
『新良さん、今日は流石に戮を虐めないでやってください。…こうなったのは俺にも否、が。』
「そこまで意地悪な大人じゃぁないですよー、何言ってるんですか江夜。……その微妙な間は今回は気にせずスルーさせてもらいますけれど。じゃぁ戮は校門の前にでもほっぽいてください。」
ぷつりと、通話を切る。
はー、と溜め息をついてもよかったのだが、それでは喧しいほどに過去言われた言葉が蘇るので辞めておいた。(こう考えた時点で既に浮んでしまったのは数には数えないでおく。)
親子共々、なんとまぁ手のかかるというかやっかいというか。
親が自由奔放、何時でも何処でもマイペースにそれでいて残虐に使命を繰り返す。
それを幾許か受け継いだらしい双子のそっくりな子供たちは子供たちでなんというか、あぁ間抜さが加わり馬鹿が増し、そして可愛げがあったというのだろうか。
「丸くなったなんていわれそうですけど。」
ふ、と遠くを見つめたら影どころかその魂がべったりと張り付いて「俺の子供!もう可愛いだろ?な?な!?」なんて言い続ける親馬鹿野郎が見えるような気がする。

それはそれで、またあの子たちと同じく、楽しいのかもしれないと、柄にも無く新良が優しく微笑んだ。

 









(小話、連なってるかんじで。)(移転やらテストやらで疲労してるのに描いてしまった。)(060519//Hisaki.S)