夢が醒めないことを願い、
夢が醒めることを恐れて、
夢が終わることを望んだ。
所詮人が持つ掌など小さく小さくそしてほんの僅かな希望とか光とか、そんな物は滅多に掴めることもなく。
それなのに手を伸ばし続ける人間の、何と愚かなことだろう。
そうやってみていたはずなのに。そうだったのに、どうしてだろう。
「うわ、何?どしたんだよ…骸。」
「……離してください。」
「いや、掴んでるの骸だって。俺の手がっしりホールドしたままそんなこと言われても…」
「五月蝿いですね、さっさと離してください。ほら、早く。」
「あぁやっぱこういうの俺に回ってくるんだ…」
再会は、実にあっけないものだった。
あの戦いの後。
ボンゴレ10代目を決める為の戦に、守護者となった故に実体化しつつそのまま久々に力を使うものだから自分の中のストッパーも忘れて、ギリギリまで戯れるように幻に幻を重ねてしまった。
あぁなんて自分は子供じみていたのだろうかと反省を僅かにしながら沈んだ元の場所に響いた小さな囁きに惹かれて、時間感覚も忘れておやおやと起きてみればきょとんと此方を見ていた瞳が大きく開かれる瞬間だった。
「ちょ…あれ!?また入れ替わったの!?っていうかお前力使いすぎて暫く出てこれないってリボーン言ってなかったっけ!?」
「六道骸をなめないでください、今すぐ君をブチのめすぐらい造作もないですよ。」
「うわぁあああああごめんごめん!!!」
「…冗談ですよ。相変わらずよわむしさんですねえ。」
くふ、と笑みを漏らせばさいあくだと呟いたまま、再びくるりと背を向けて歩みを進める。
そんな小さすぎる背中について行くように足を進めれば、言葉は決して交わされる事もなく、必然的に意識は自問自答や思考に飛んでしまう。
例えば、なんて始まるを、以って。
それは、例えばは無駄な思考でしかないことは十二分に理解していても、どうしても始まってしまう何時も通りの自虐思考。
「此方は暗くて冷たくてどうしようもなく寂しい場所なんです。」
だから、考えてしまうのだ。無駄な思考をつらつらと、溢れて流れ出して自分の中から消し去りたくて。
「例えば僕がこの巡りにいなければマフィアを存分に憎まなかっただとか、例えば僕が君に出会わなかったら僕は世界を憎めたままだったのにとか、例えば君が僕の横に立つ偶然がなければ僕はどうなっているだろうかとか。君と戦ったことは正解なのか不正解なのか、あのふたりの手を引いてきたのは正解だったのか不正解だったのかとか、どうして僕は君などに力を貸したのだろうか、とか。」
つい先刻、考えたことだった。
ぐるぐると考えを脳裏に張り巡らせても、耳元から迫るようなごぽりごぽりと圧迫するような水音が邪魔をするように思考を遮って、結局明確な答えはとうとう出せずに、クロームの小さなささやきに耳を貸して目を開いたら、彼が目の前を歩いていて。
「ねえ、君は、答えを知っていますか?僕が知らない答えを。」
零せば、彼は。
少し先を歩いていた背中をくるりと反転させて、ぱちりと瞳をあわせてそのくちびるを、言葉を吐く為だけに開く。
「知らない、よ。」
一言目は、ためらいがちに。
息を少し吸い込んで、再び出される声を待つ。
「でもあの、なんとなく俺が思ったことなんだけど、ね。………骸は、手を伸ばしてるんだろ。苦しんでたあのふたりとか、クローム…さん、とか。何だかんだ言いつつ俺も、お前に助けてもらっちゃったし。でもほんとはお前、その手を取るんじゃなくて、取って欲しいんじゃないかって…いやまあ思っただけだけど!俺が思ったことだから!気にしなくてもいいんだけど!」
ばたばたと子供のように慌てて必死になって、両手を振る姿に思わず笑みを漏らしてしまう。
「けど。」
「なんですか、まだ何か、おありで?」
「いやあの、………お前、何だかんだで、何時も何時も、誰かを救おうと、もがいてるよね、…って。」
そこで、歪む。
幾度の巡り幾度の輪廻、あぁそうだ誰かが自分の後ろを必ず付いてくる。
けれど僕は延々巡りを繰り返すので。
それは所詮、一時の戯れにしか、すぎないのだ。
「は、所詮、甘い甘いお馬鹿さんですね、君は。」
「ホントに、失礼だよな…お前…」
少しだけ笑みは引き攣って。
彼の見透かしたような答えに、僅かに怯えて。
(あぁきっと彼は)
悪夢のような今在る現状を来たる日にぐちゃぐちゃにブチ壊して、己の立つ道を、選ばせるのだろう。
いつもよりも流れの早く、そして面白さがかけないこの非情な世界に甘える自分を無理矢理立たせて、きっと。
絶対的な王になる彼の影を腹いせに踏みつけて、あと少し実体化していられる時間一体どうやって彼を苦しめようか。
今度こそちゃんと笑顔のままに思考する。
けれど、あぁ。
あぁ、水の音が、うるさい。
僕が取り零した、(いとおしき)ものたちよ。
(温もりも声も音も愛しさも全てはみな水の中から見えるぼんやりとした幻にしか、すぎなくて。)
(ツンデレ骸。ネガティブ骸。精神的に弱ってる骸も大好きです。にぶちんすぎるツナも大好きです。いい加減結婚してくれマジで。……すいません原作でのあまりの骸不足故に色々可笑しいんです。いやもうそりゃ前からだけどさ!もうホント骸が欲しいです。骸飢え。そしてあまりの骸ツナ人口の少なさに嘆いているんです。増えろ!(笑)…っていうか今回も電波文で申し訳ないです_| ̄|○)(070528//Hisaki.S)
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