「……」
声が、出なかった。 後ろで何かを言い続けるよく聞く弟の声も雑音にしか聞こえなかった。 微笑んだ顔は何時もの悔しい位見惚れてしまいそうな顔なのに所々赤に染まってる。 太陽に近づいた、偽者の羽根はもう溶けた。 じゃぁ此れが本物なら目の前で苦しみながらも微笑む彼は何時ものように俺の隣に居てくれるのだろうか。 死なないで、お願いだから。 硬く握った手から力が抜けた。 何処かの御伽話のように俺の涙で彼が生き返るなんて、あり得ないだろうか。 そう願う自分が滑稽で、また涙した。(鋼の錬金術師)
安穏を奪った。 希望を奪った。 自由を奪った。 そして俺達を縛り付ける、呪いのように。 呪縛はこの体と鎧。 きしむ機械音は罪の証。 何処まで行けばたどり着く。 何処まで行けば――許される。 答えなどないと、わかってしまえば其れが一番楽なのに。 けれど其れを認めたくない。 怖いから。 どこまで、行けば。(鋼の錬金術師)
追いかけたい 貴方の背中にしがみついてでも。 ――其れが成り行きでどうなったとしても僕等の今はこの瞬間しかないからどうでも良いことだ。 追いかけたい 貴方の背中を蹴り飛ばしてでも。 ――例え貴方の心の傷になろうとも其れは俺という存在が鮮明に植えつけられたという証拠になるから、別に良い。 追いかけたい 世界中を敵に回してでも。 ――けれど貴方が俺の敵になるなんてありえないことだと解っているから、俺は喜んで全てを敵に回してやる。 追いかけたい 貴方を敵に回してでも。 ――其の行為全てが貴方の策士だとわかっているから、其れならば一時的に貴方の敵になっても良い。 追いかけたい この罪を背負い行く先がわからなくとも。 ――ならば手探りでも良い、進むから。涙を流してでも進むから。 追いかけたい 取り戻すため。 追いかけたい。 追いかけたい。 (鋼の錬金術師)
駆ける 羽根を固めて、飛ぼうとする。 カミサマの力を借りるため。 羽根は血を流し僕等は地へ其の更に奥底へ。 果てへと加速して逝く ねぇ只の純粋な思いは如何して崩れ去ったのだろう。 おかあさんと呼ぶ声も只血なまぐさい部屋にこだまするだけで。 (鋼の錬金術師)
「大佐、大佐。」 「……なんだ?」 「あんな、俺背ぇ伸びたんだぜ。」 「………………ほぅ。」 「あ、何だよ!疑いの眼差し向けんなよ!」 「……いや、見たところあまりかわりがないように見えてな。」 「っ…悪かったですね!チ ビ で !」 「まぁ、そう怒るな。」 「……………何。」 「測るんだよ」 「……頭に手ぇ乗っけてわかんのかよ」 「あたりまえだろう。私を誰だと思っているんだ。」 (鋼の錬金術師)