赤い空が歪む。 ぐにゃりと歪む。 降り注ぐ。 何色? にこりと 微笑む。 ふたりで、先に行った。 手を硬く繋いで。 置いてけぼり。 その手首は。 ごとりとふたつ手首が落ちて。 皆融ける。
(さんねんはながくてみじかくて、とてもかなしくて。)
光は無いんだ。 何時か突き放されてしまうのではないかだとか。 何時か一人孤独に道端で座り込む羽目になるんじゃないかとか。 馬鹿みたいに間抜としか言いようが無い、まるで戮みたいなことを考える自分がいることにふと気付く。 気付けば気付いたで、笑うしか、無い。 あぁ馬鹿みたい。 そんなことは、今直ぐ後ろを振り返れば、あることなのに。 一足、踏み外しただけで。 きっとそれは、すぐそこに、ある。 だから だから必死に君に縋りつく。 戮。 君、に。
(雑音叙情詩)
まるでまるで鏡を見ているみたいに。 「それじゃぁ、せーので、切るぞ。」 「うん。」 「…………」 「…………」 「…………」 「…え、何此れ、俺が言うの?」 「あ?違うのかよ。待ってんだけど。」 「いや、これ普通は言い出したほうが…まぁいいや。じゃぁいくよ?せーの…」 鏡の、中のように。 まるまる抜け出した鏡そのもののように。 ざくりと、 足音の響く、屋上まであと一歩の踊り場。 君と髪を、切る。 鏡の中。
ざく。 「………あれ?」 ごとりと、髪を切るためのはさみではなく、実際は家庭科室から勝手に拝借してきた布切狭を置く。 「如何したの?」 「いや…なんか、違和感が……。」 うーんと唸りながら、己の前髪をひょいと掴んで、ハタと気付く。 「…これ、分け目逆…?」 「……あぁ、本当だ。本当に、鏡みたいだね。」 「……言えよ!なんだそれ!」 「えー、別にいいでしょ、そこまで同じじゃなくても。」 「そうじゃねぇって、新良さんにどっちがどっちか、余計にバレるじゃねぇかよ!」 「そこなんだ。」
たすけて。 だれ、か たすけてだれか ! 走りすぎていくのは私じゃなくて風景。 消えてなくなるのは私じゃなくて師匠。 駄目です消えないで。 あなたが消えてしまえば私はどうしようもない。 たすけて 声は何故だか擦れてうまく出てくれない。 伝わる言葉で言い聞かせなきゃ、誰も応えてはくれないのに。 たすけて 足元はどうしても縺れてそのままばたんと倒れこむ。 人なんかそこらへんに一杯散らばっているのに誰一人として瞳をあわせない。 なんて なんて酷い世界。 「たすけて、よ!!!」 だん、と血だらけの、まだ残っているほうの腕を地面に叩き付けて 亡くなった右腕は支えにもなりやしないしただ出血を促すようにびくびくと痙攣を続けるだけで。 あぁ師匠 誰も助けてくれない 私も助けることはできない。 ねぇたすけて だれか この酷く醜く茨が締め付ける世界から わたしはいいよ でもどうか師匠だけは。
(オリジナル)