>>声は出ない。

 

名前を呼ぶことは許されない。
引き止めることも許されない。
よって、その手首をへし折る如き力で掴み引き寄せることすら、この場所は立場はそして世界は、許しはしないのだ。
例え苦しむそぶりで頭を抱えても、幼稚な我儘を呟こうとも。


立場の次は世界が邪魔をする。
よって、この気持ちはすべて抹消してやろうと思う。
けれどそんなこともできずに時は過ぎて名を呼べずに年を喰らう。



「   」




何時頃、お前の姿をもう一度見れるだろうか。

(女々しいウパラ)

 

 

 

>>消滅なんてものは許しはしない。そう口にしながら、きっと。

 


「前衛、ぼんやりしていると倒されますよ!!」
「おーおー、やってんなー。」
金属と金属がぶつかり合う音すらも掻き消すような通る声。
すれ違う人々は何事か、と驚いて慌てる。それは演習中の軍人とて同じことだ。
うっかりと声を漏らしたり、手にした武器を落したり、詠唱が止まったり。
「……陛下。何サボって逃走なんてしているんですか。というよりも演習中に居られると部下が動揺しちゃって迷惑です。」
「笑顔で攻撃すんなよなー、仮にも皇帝だぞ?」
「それはそれは大変失礼致しましたー。」
「失礼したような顔…じゃ、ねぇな。」
喉を上下させてくつくつと笑う、姿。
「シケた面してやがったら腹抱えて笑ってやろうと思ったんだがな。」
「生憎、そんなヘタレな精神じゃぁやっていけないもので。」
「ま、そりゃ俺も同じ、か…。」
小さく小さく名前を呟いて。
習うように、同じように空を見上げる。




ひとつふえたところに手を伸ばせば掴めそうに見えたので、とりあえず手は伸ばしておいた。

(駄目なおとなたちの、消滅から一週間以内の奮闘。ガイ様は宮殿内でブウサギルーク連れてうろうろしてます。ピオはそれを眺めるのに飽きたので気晴らしに外にでてきたよ、って感じなんです。結局皆動揺は隠せてないんだよ、いいおとなたち!)(ちなみにこの後ジェイドは自棄酒です。ガイもについてって同じく自棄酒)

 

 

 

>>囁き声は幻聴でしかない。

 

「  」



声色は柔らかく、心地よく響く。
あの日、から。
グランコクマでの日々を過ごしながら稀に、声が聞こえるような気がする。
案外そりゃーあいつかもなぁ、などと、ブウサギの飼い主は軽快に笑い飛ばすが、にニマニマと微笑んでないで下さい気持悪い、なんて一蹴してしまうような非道な大佐殿もいる。
なんでも、いい。
でも此処で、声が聞こえるということは、ずっとずっと、其処にいるんだろ。
「なぁ、ルーク…。」
こどもを呑み込んだ空はいっそ壊してやりたいほどに青々と照らす。

 

(ガイルク書きたいなーとか思って気晴らしにぽつぽつ打ってた。なんか気に入らないので途中放棄)

 

 

 

>>全てが違うけれど、欠けた僕等は寄り添いあう。

 

ねぇほらごらん、僕等は何処まででもいけるんだ。
君が消えるなんて自嘲してくれなければ僕は何処まででも手を引いていけるんだ。
だから、もうそんな笑みを消して。
「痛々しい、かな。そんな。」
「えぇ、とっても痛々しいです。」
にこりと笑みを向ければ、う、と言葉に詰まったようにだんまりとする。
「だからルーク、気休めでもいいんです。僕と居る時は少しでも気が楽になれれば、僕はそれで満足なんです。」
「うん、……、うん。」
涙を流さなくてもいいんだ。
横に居るだけで、それで。



欠けたレプリカは傷を舐めあう。

 

(ルークの笑みも痛々しいがイオン様のレプリカですよ発言の後の笑みも痛々しい気がした。)(イオルクは否が応でも傷のなめあいになるのは単に俺が書いているからなのだろうか…)

 

 

 

>>同じ顔で滅多に見せない優しい顔で、ドア越しに微笑む姿を見送る。

 


「やっぱ行っちゃうんだろ。」
「此処まできて何抜かしてやがる。」
線路を眺めながら、ホームにぽつんと設置された椅子に赤いシルエットが二つ。
真夏の太陽がじりじりと照らす中で、人気の無い昼間。アナウンスが電車を予告する。
「アッシュが帰ってくる頃、俺死んじゃってるかも。」
「ガイが死なせやしねえよ。あの世話焼きがいる限りな。」
深く深く溜め息をつき、その溜め息すらもガタンゴトンと音を立ててやってきた電車に掻き消される。
少しだけ片方が目を開いて、さてどうしてやろうと考え込む。
どうやって困らせてやろう。最後に最後に、どうやって。
「アッシュがいなくて死んでたらどうする?」
「花ぐらいならやる。」
電車が止まる。ドアが開く。
空気の抜けるような音を聞いてから腰を上げて荷物を手にすたすたと乗車する姿を、同じ赤が追いかける。
「じゃー…」
「グダグダ五月蝿えんだよ。連絡ぐらいなら気の済むまでしてやるから半年ぐらい待てないのかお前は。」
「………連絡すんだって約束するなら、死なないよ。多分。」
「帰って来いとか抜かして約束、昨日したばっかだろう。」
「もういっこ。」
もうすぐ閉まるドア越しに指切りをする。
似通った手は同じように汗ばんだまま、それを拭うこともせず。

(車輪の唄を聴いてたらアシュルク双子設定で現代パロネタが浮んだので。何故かアッシュが半年留学設定になった。汗ばんだ手で指きりするとか、何故か萌えたんですが。青春か?それともアシュルク効果か?)