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>>僕等の協和音。
「ピアニストーっ!お前、名前…何ーっ?」
手を伸ばしても届かないところまで言って、そいつは改めて声を張り上げて名前の分からぬ者を呼ぶ。
「……総士…皆城、総士だ!!」
他人と口を利くのさえもが何時振りだろうか、わからない。
いつもならとてもとても嫌な作業。面倒くさいとすら、思った。
なのに先程の歌声に、多分酔いしれたんだろう。声は意識する前に出てきた。
「総士…、総士!俺、お前のピアノ…嫌いじゃないー!!」
「…どっちだよ…っ!?」
勢いよく投げられたほんの少し厚手の紙。紙飛行機。
――書かれていたのは、明日の日付と時間と、名の知らぬ場所。
「それ、来いよ!?絶対だぞー!!!」
「ってあ…ちょっ……!?」
そのまま、黒い髪を靡かせて。
声に酔わされたまま。
困惑の張本人は、軽々と走り去って行った。
最期に小さく手を振って。
(蒼穹のファフナー/パラレル)
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