此れは僕の僕に対する罪の償いでしか、ない。
君が居て僕が居てそれでも彼女は居なくなった。
オーバードース直前まで行ったというのにも関わらず、対して聞いてくれない薬瓶を睨みつけてから舌打ちして投げ捨てる。 多分、恐らく。初めてシステムに繋がった級友の死を目の当たりにしたせいである。解ってる。
心臓の音が、五月蝿くて、仕方ない。
当然のように自爆システムを使用するといった彼女の思考とか、色々なものがまじりあって。 ほんの一瞬だけ、反応が出来なかった。 「皆城君、私……フェンリルを使うわ。」―・・島を。一騎の、たったひとつの居場所を守るため。 “私は私の身さえ滅ぼしてでも貴方と交わした約束を果たし貴方を守っていくために。”
彼女、羽佐間翔子は、強い思考を抱いたまま、想い出にふけっていた。 彼女のなかには消して、死という結末に対する恐怖は無かった。
「怖がっていたのは……僕か…。」 死という、恐怖と。繋がっていた感情を。 まだ制御すらもままならなかった。抑制することなど、到底、不可能だった。
鈍い、金属音。 がしゃりと落ちたインクが零れ落ちてから、雨に撃たれて弾けて流されていく。 いっそ此の雨が罪さえも流してしまえば良いのに。
赤い水、黄色い水。地面に既に存在していた無機質が色が色とりどりに侵食されていく。
「…すまないな、羽佐間………。」 此れは、守っていくための、手段。パイロットを守る為の。 一騎を、守っていくための。
「…解って、いるさ。此れが死者への冒涜以外の何物でもないこと位…。それでも、」 それでも、此れは僕がやらなければいけない仕事だから。 誰かにこんな大罪と重荷を、背負わせる訳に、いかないから。
「恨むのならば……僕を、恨めば良い。此れは決して他人が望んだことなんかじゃ、ない。賛成された行為などでは、決して…ない。」
あぁそれでも君は微笑んでくれるのだろう。許すのだろう。それが、一騎の為に為るのだと、知っているのだから。
私は島を守るのだと。 私は一騎君の帰る場所を守るのだと。 手を差し伸べて、私は貴方を、貴方の大切な人々を守っていくのだと。 “だから、皆城君。” 一騎くんを、おねがい、と。
死に際の言葉がまだ、エコーしてる。
「願いはきっと、守ってみせるさ。」 君のためそして、僕のため。
「さようなら、羽佐間翔子。」 涙はそれでも出てこなかった。
呼び鈴を押しても、反応は何も無かった。 「…………一騎。」 「そ……し……」 家主は無断侵入者が誰であったのか気にすることも無く、ただ部屋の隅で小さく縮こまっていた。 顔を上げた時、まだ涙の痕が残っていたあたり、大方静かに泣いていたのだろうと、解った。 「何時まで、しょげているつもりだ。来い、行くぞ。」 ぐい、と腕を持ち、無理矢理立たせると驚いたように此方を見る。 「い、行くって…何処にだよっ…!!」
「墓参りだ。」
いっそ、涙を流してしまえた方がよかった。
彼女の願いの為に、自分が仕出かした事。 何を生み何を作るのか、何となく、解っていた。 知らぬと偽って色の無い雨の降る墓場、たった一つ色鮮やかに聳え立っていた羽佐間家の墓石は、遠くからでも良く目立つ。 ソレを知るものであるから、こそ。 ただそれは、ほんの少しだけ雨に洗われて、またモノクロの世界に少しずつ少しずつ溶け込んでいっていた。
空が泣く。 拒絶を示すのか、それでも許すと行っているのか。 解らないけど、そんな彼女の為に、まだ少しだけ一騎が泣いていた。
此れは、僕の。 僕に対する、償いでしかない。
呪いの様にまた一つ痛みとして足枷が音を立てて付けられた。 |
うわーぁいやっと打てた、ドラマCDネタ!(笑) 041213++Hisaki.S. |