凍えそうな空を見上げていたら頭上にほんの僅かな重力が加わる。
それが一体誰の手なのか、50%の正解率を誇って声にしてみる。その、名を。
「……ピオニー陛下。」
「残念ながら外れです。」
「………」
「心底しかめっ面しているんでしょうね。」
「どうにもこうにも、貴方と陛下の気配がわからなくなるんです…よく一緒に居るからですかね?」
くく、と喉から哂うような音が聞こえるが、暗闇に紛れている上、背中に目がついているわけでもないので正確に今の状況を汲み取ることはできない。
が、確実にいえるのはひとつだ。
「…心の底から馬鹿にしてませんか。」
「わかりましたか?」
「えぇ、いやってほど。」
「それじゃぁ帰りますよ。陛下が喧しいもので。貴女が居ないとあの人も可笑しくなるんです。」
「も?」
「ふむ、うっかり本音が出てしまいましたか。」
「ちょっと寒気がするのでうそ臭い演技のような遠まわしはやめてください」
「おやおや手厳しいですね。」
「喧しい人が騒いでいるのなら私は貴方を置いてさっさと帰って逃げてしまいたいのですけれど。」
よろしいですか?と、そこで初めて暗闇に浮ぶピジョンブラッドを直視する。
私の眼はそんな美しい物でもありませんよと、以前笑っていたがそんなこともないと、思えてしまう。
幻想的な月光の中でほの暗く眼光を光らせ輝く譜眼の光はまさしくピジョンブラッドだろう。
「…綺麗ですね。本当に。」
「……所詮まがい物に近いですけどね。」
「本当…。そうだ、大佐?」
「なんです?」









貴方が死んだ時、その美しい瞳を私にください。
(いいですよ、綺麗に抉って瓶詰めにして差し上げます、貴方の為に。と、彼が笑った。)






(ヒロイン紹介代わりにちょちょっと書こうとしたらただの痛い話になりました。)(060609)