「はいさー、完了。」
ほんの少し前、縫い始めと同じような音を立てて玉止めをして余った糸を鋏で切り。
ジグザグ縫いでさくさくと縫い仕上げた、江夜の腹にくっきりと痕が残る危惧を醸し出すような全長20センチ程度の斬られた傷口。
ぴったりと閉じたのを満足そうに戮が眺めて、よし、と漏らす。
「あぁ、どーもありがとう戮。……っと…うーん、これ起き上がるとまた開くかもね。痛い。」
「阿保かよ!痛いに決まってんじゃねぇか!っていうか折角縫ったのに動くな、傷開くだろ…!」
「うん、そうだね、でもソファーで寝るってのも、落ちたら嫌だし。あ、じゃぁ戮、連れてってよ。肩貸してくれれば寝室までは行けるからさ。」
「そ、そうだよ!また傷開いたらお前、今度こそ俺が小腸を蝶々結びすんぞ!」
「そしたら戮の腸も同じようにしてあげるね。はい、さっさと肩貸してー。」
漫才もこなせる様なほどに回復したのは、それから間も、無く。
ふたりが笑顔であるのも、「何時もの光景」。
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